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──私は幸せですよ、いつもいつでも……──

聖王協会に緊急連絡が入ってきたのは、クリスマスイヴの更に前夜だった。
けたたましく鳴るサイレンに、教会騎士を始め職員が全員起き出した。
何事かとセインが執務室へ向かおうとすると、ばたばたとカリムがロングスカートの裾をはためかせて駆け寄ってきた。
「な、何事ですかよ騎士カリム?」
余りの気迫に一瞬呂律が回らなくなる。そうかと思えば、カリムはセインの両肩に手を置いた。
まるでこれから戦争でも起きるような……
「いい、これからあなたに重要な任務を与えます。しくじった場合は……」
「え、何その緊張感? この夜中から何すればいいの?」
セインは戦闘要因ではなく、従って現場直行の仕事はないはずだった。
……が、そんな見習いシスターの発想を遥か上回る命令が下ったのだった。
「イクスの護衛よ、あの娘を安全な場所へ連れていって。具体的にはミッド郊外、なのはさんの家。いいわね?
 車を出すから、あなたとイクスは3から始まる車に乗るのよ。いい?」
「は、はい……」

そうこうしている間にも、周囲の緊張感は増していく一方だった。
「誰でもいい、早く部隊を結成しろ!」
「ダメです、先程の通信以来連絡が途絶しました!」
「このままでは……古代ベルカ並みの戦争が発生します!」
「俺、このクリスマスが終ったら結婚するんだ」

事情を聞いている暇はない。セインは一瞬の判断で身体の向きを変えた。
イクスヴェリアの寝室――サイレンがようやく届く程遠い、高い尖塔の上だ――に行くと、分厚いドアをノックした。
すぐに、中から外套を羽織ったもこもこの冥王が出てきた。
セインと同じ、何も分からなそうな顔をしているが、同時に決意を込めたような、まさに王の風格を漂わせていた。
「緊急避難の連絡は来ています。セインが案内をして頂けるんですね?」
「そうみたい。ディードは多分前線に行くと思う……さ、行きますよイクス。あたし達も早く行かないと」
そこまで言い切って、セインの心にふと疑問が浮かんだ。
行き先は確か高町家……却ってクラナガンの中心に近づくのに、なぜそんな場所に?
しかし、考えている暇はない。簡単に荷物をまとめると、セインは立ち上がった。
「行きますよ、陛下」
「はい」
こうして、夜のベルカ自治区を数台の車両が疾駆することになった……が、
その目的を知る者は、カリムとなのは以外にいない。


同刻、スクライア家。
ヴィヴィオとユーノは既に夢の世界だが、一人だけ起きている人影があった。
リビングで会話をしている二人には、小さな緊張感が漂っている。
「――という訳なのよ」
「にゃはは、仕方ないとはいえ、随分大がかりですね」
なのはとカリムが通話をしているが、寝ている二人のために小さな声で話しており、その内容は他人には漏れることはない。
今回のメイン議題、イクスヴェリアがなのはの家に来ることに関しては、二つ返事で承諾した。
「あと、ビザはこちらで朝までに出しておくから、――まで連れていってもらえるかしら」
「何かホントに大がかりですね……まぁ問題はないですよ、一人増えても大した手間じゃないですし」

静かな夜。誰も話す者はいない。耳が痛くなるような静寂の中、二人の声だけが暗いリビングに響く。
両者間で合意が得られた後は、やはり静かに通話を切った。
明日の朝には、超特急のビザと一緒に、冥王陛下――ヴィヴィオにとって一番の友達――が辿り着くことだろう。
「明日はよろしくお願いしますね、なのはさん」
「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします」
ぷつんと回線が切れて、静寂が部屋の中に訪れる。
なのはは時計を見て、独り言を呟く。
「明日は目覚ましの準備をしないといけないな……」
なのはは寝室に戻ると、残っていた小さな豆電球を消した。
「明日からのクリスマスが、子供達に素敵な日々になりますように……」

***

翌日。
「おはようございます、ヴィヴィオ。朝ですよ」
「うーん……あと五分……って、イクス!? どうしてここに!?」

ヴィヴィオはいつもと違う人に起こされて、布団ごとのけぞって跳ね起きた。
厚手のトレンチを着ていると、まるでベルカのエージェント……じゃなくて!
「昨日の夜、防災特例で避難命令が私に下りまして……で、どういう訳かヴィヴィオのお宅にお邪魔しています」
なるほど、分からない。意味不明過ぎる……どうなってるの?
そもそもありえない、何かの間違いではないのか?
「で、結局私の家にいて……後はどうするの?
 私達、ちょうど今日からクリスマスのお休みで実家──海鳴に帰るんだけど」
「多分、そこに行けってことだと思います。クラナガンが危ないから……」
まるで理解できない。取り敢えずテレビでも見てみよう。
リビングに行ってテレビをつけて、ニュースチャンネルに合わせてみる。
クラナガン中心部からずっと南に行ったコンビナートで、大規模火災が発生したというニュースをやっていた。
しかし、これだけで『イクスヴェリアが避難する』ことはないような……
とすると、つまり。
「あぁ……そういうこと……」
何となく読めてきた。リビングに現れてきた母親に目配せをしてみると、にっこりサムズアップされた。

──これ絶対ハメられてるよ! でもこんなことイクスには言えない!!

「どうしたんですか?」
「ううん……何でもない。ところでイクス、ここには一人で来たの?」
セインに送って貰った、と少女は言った。ではそのセインはというと……もう教会に戻ったらしい。
凄まじい弾丸ツアーだ。管理局からはおろか、この郊外地区からだって随分かかるのに。
「ヴィヴィオ、準備なさい。イクスも、セインがそこにリュック置いていってくれたから、忘れないでね」
「あ、はい」
遅れて起きてきたユーノも一瞬固まったが、「まぁそんなもんか」という何食わぬ顔で椅子に座り、
なのはにコーヒーを頼んでいた。
「なんていうか……パパは慣れてるんだろうな……こういうの」
海鳴には、高町家を始め、母親の旧友である月村家、バニングス家がある。
毎回、行けば行くほど人数が増えている気がする……そういえばいつだったか、
アインハルトと一緒にクリスマス休暇で海鳴に行ったこともあった。
ちなみに今回本人はといえば、中等部のクリスマス旅行ということで向こうに行っている。
「ヴィヴィオ、イクス、朝ご飯食べたら行くからね。今のうちに着替えておきなさい」
味噌汁の匂いを嗅ぐと、くぅぅとお腹が鳴った。
イクスヴェリアは初めての匂いなのか、そわそわと落ち着きなさげに椅子に座っていた。
ヴィヴィオは自室に戻って服を着替え、顔を洗った。
そしてダイニングまで行くと、すっかり朝食が出来上がっていて、三人はもうテーブルに着いていた。
「あ、あの、ご飯を食べている時間はあるのでしょうか……?」
「大丈夫だよ、ただあんまりゆっくりもできないから、食べ終って歯を磨いたらすぐに出るからね」

今日の朝食は、ご飯に味噌汁、卵焼きに鮭の塩焼き、それからおひたし。
卵焼きは砂糖が入っていて甘く、味噌汁はダシが良く出ていて美味しい。
「これは……海鳴でしたっけ、向こうの食事なのですか?」
「あれ、イクスは和食初めて? お口に合うと嬉しいな」
イクスヴェリアはまじまじと膳を見つめた後、きょろきょろと周囲を見回した。
ヴィヴィオはぱたぱたと食器棚に歩いて行って、ナイフとフォークを渡した。
「はい、イクス。もう、ママったら」
「にゃはは……ごめんね、気付かなくて」
なのはの場合、天然と自発的なボケの区別がつきにくいから困る。
改めて食事を摂り始めると、おひたしを口に運んだイクスヴェリアが、ぽつんと呟いた。
「これ、美味しいです……」
ぱぁっと明るい顔になるなのはが、少女をいっぱいなでなでしている。
双子の姉妹というか──この家には最初からイクスヴェリアがいたかのようだ。
「とっても美味しいよ、なのは」
「ああんもう、あなたってばぁ♪」
……こっちのバカップルっぷりはいつもと変わらなかった。

朝食後、いよいよ海鳴に向かう。
事前に申請しておけば、自宅に転送用ゲートを開いてくれる……
魔法が許可されていない世界に行くには凄く便利だ。
「どこに到着するのですか?」
「海鳴のどこか……だよ。誰も見ていない場所を自動探索してくれるの」
なのはの端末から、管理局の担当者に繋いでいるようだ。
画面越しに電子バーコードを提示するように求められ、それぞれ短期ビザを提示した。
「ユーノ・スクライアさん、なのは・T・スクライアさん、
 ヴィヴィオ・スクライアさん、イクスヴェリア・グラシアさんですね。はい、大丈夫ですよ。
 これから転送ゲートを開きますので、少々お待ち下さい」
そんなに時間が経たない内に、虹色のゲートが玄関に出現した。
海鳴のどこに着くのか……それは誰にも分からない。
けれど、久しぶりの『実家』も、楽しいものになるはずだ。
「行くよ、イクス!」
「……はい、ヴィヴィオ!」

***

その頃、ベルカ自治区。
「あーもうカリムに騙された! ドクターにも騙されたことないのに!!」
「まぁまぁ落ち着いて下さい、シスターセイン。これは不可避の事態なのです」
教会の中で、セインはぐでんと机に突っ伏していた。
深夜に叩き起こされた挙句、ミッドのド真ん中で往復したのだ。
しかも緊急事態と聞いて、緊張感で精神的にもひたすら疲れていた。
「仕方がないではないですか。あれだけクリスマスを楽しみにしていた陛下が、
 『スバルが急な仕事でキャンセルになった』となれば……考えただけでもどうなるか」
「あー、イクスって火事場で一人ぼっちだったのをスバルが助けたんでしょ?
 逆というか……今度はイクスが一人で火事場に突っ込んでいっても不思議じゃないよね」
コンビナート火災の規模は相当大きく、スバル達第一線の防災士達でも手こずっているという話だ。
現地にベタ付きで交互に仮眠を取るのが精一杯で、クリスマスなんて夢のまた夢──というのが、現場の声だった。
「しかし、ヴォルツさんも律儀でしたね、課員全員の予定を把握しているなんて」
「まぁ……特にスバル・イクス関係は最悪外交問題にすらなるから……仕方ないんじゃないかな……」
ぐったりと腕を伸ばしたまま、ぴくりとも動かないセイン。
そんな姿を見ていたシャッハが、そっと立ち上がった。
「シスターセイン、あなたもう今日は引いていいわよ。夜のパーティーだけ出席なさいな。準備は私達で行います」
「え、ホントに……うーん悪いなぁ……でもありがと、代りに片付け頑張るわ」

事の真相は、割とあっさり判明した。
イクスヴェリアをなのは経由で海鳴に行けば、それはそれでパーティーを開ける。
カリムがその辺を把握していたことについては最早突っ込むつもりはないが……
あの教会騎士が持つ根回し力は最高評議会議員並かそれ以上だから、今更気にする必要もない。
セインは大あくびをすると、シャッハに一例をして、居室の方に下がった。
これ以上眠気の残る頭で働くことは無理だと考え、大人しくシャッハに甘えることにした。
「ふふ……今年のパーティーも、上手くいくといいな」

シャッハやカリムには適当な態度だが、信徒には真摯に接する。
それが一つの正義として数えているセインだった。

***

イクスヴェリアがゲートを抜けて辿り着いた場所は、当然ながら知らない場所だった。
ミッドチルダのように高架線が走っているが、そこにはけたたましい音を立てる箱が行き来している。
『誰もいない場所の自動探索』そのままに、本当に誰もいなそうな、小さな路地だった。
そこから表の路地に出て、駅のロータリーに出る。
「ちょっと上、昇ってみようか」
デッキに登って、そして、ミッドと同じ景色を見た──海だ。
青くキラキラと輝く一面のパノラマは、太陽の光を受けて、光の粒が踊っているように見えた。
「とっても素敵です! なのはさん達は毎日こんな景色を見ていたんですか!?」
「にゃはは……そんなに褒められると照れるな。毎日じゃないけど、ずっと見ていたのはホントだよ」
少し顔を赤らめるなのは。いくらヴィヴィオが養子とはいえ、こんなに若い母親というのは珍しい。
ヴィヴィオと仲良く手を繋いで、駅前の駐車場まで連れて行ってもらう。
そこで……また凄いことが起きた。
「やっと来たわね、なのは、ユーノ! ヴィヴィオ、お久しぶり! で、えっと……」
「あぁ、急な話でまだ紹介してなかったよね。イクス、こちらアリサちゃん──アリサ・バニングスさんだよ」
「は、初めまして。イクスヴェリア・グラシアといいます。ヴィヴィオのお友達です。イクスって呼んで下さい」
たどたどしい日本語で自己紹介をする。
気を使ってくれたのか、聖王教会関係の話は振らなかった。
どの道、こんな遠くでは聖王の威信など届かないだろう。
「で、こちらが月村すずかさん。二人共、わたしの一番の友達だよ」
「初めまして、イクスちゃん」
更に、すずかの姉忍、月村家メイドのノエル、ファリン、バニングス家の執事鮫島……と大勢紹介された。
こんな大所帯で一体どこへ行くというのだろうか。
「ヴィヴィオ、お話してなかったっけ?」
「あ、うん、まだ……あのねイクス、ママの家は喫茶店をやってるの。毎年そこでクリスマスパーティーを開くんだよ!
 今日はまず、私達の家に行ってご飯を作って、そのあとその喫茶店でパーティーだよ♪」
「クリスマス……パーティー……」
確かにこの時期、聖王教会ではパーティーをやるが、どちらかというと厳かな宗教的儀式だ。
ヴィヴィオ達が参加しているパーティーとは、多分種類が違う。
結婚式の後に開かれるような、賑やかで楽しいパーティー……
「なのですか?」
「もちろん! あ、もちろんイクスはお客様だから、準備は私達でやるからね?」
元気いっぱいなヴィヴィオの笑顔。それを見ているだけで、心が癒される。
なのはとユーノは鮫島の車に、そしてイクスヴェリアとヴィヴィオはノエルの車にそれぞれ乗って、
ヴィヴィオの実家である高町家に出発した。
「ありがとうございます、わざわざ車出して頂いて」
「気にしなくていいわよ。困った時はお互い様なんだから。それに、なのはとかヴィヴィオの顔も見たかったしね」

高町宅は、周囲の家よりも明らかに広い、ちょっとした邸宅だった。
そうこうしているうちに、家の中からぱたぱたと人影が出てきた。
「はいはいー……って、なのは! 早かったわね、お久しぶり!」
金髪の綺麗な人だった。なのはより年上に見えるのだが、具体的な年齢がさっぱり見えてこない。
何かの衣装なのか、赤い帽子に赤い服、それに白のポンポンが裾についている。
二十代前半から……一番上に見積もっても二十代後半? いやいや十七歳ということも……
「あ、この子がなのはの言ってた『ヴィヴィオのお友達』ね? ん〜、可愛くてLOVE!」
突然、イクスヴェリアはふわっとその女性に抱きしめられた。
むぎゅむぎゅと大きな胸に挟まれて、ちょっぴり息が苦しくなる。

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「もうー、フィアッセさん、まずは自己紹介から始めて下さいっ!」
「ん、あぁごめんね。わたしはフィアッセ高町。なのはのお兄ちゃん……恭也のお嫁さんです♪」
きゃーきゃーとはしゃぐ、フィアッセと名乗る女性。ヴィヴィオから見ると、義理の伯母に当たるのか。
だとするとそれなりに若いのだろう。
「フィアッセ……頼むからそんないつまでも新婚みたいな……わぷっ」
「んー、恭也が一番大好きだよ! だからヤキモチ焼かないのっ♪」
なんというか……なのはとユーノのバカップルっぷりはヴィヴィオから散々聞かされていた通りだが、
源流はつまりここにあったのか……いやもっとどこか別なところにもあるのかもしれない。
そこへ、後ろからもう一人女性がやってきて、兄夫婦をぺちんぺちんと叩いっていった。
「もう、二人とも! いい年して人前でいちゃいちゃしないの! ごめんねなのは、ヴィヴィオ。いつも通りで」
「ううん、美由希おばさん。私は何とも思わないよ?
 むしろとっても仲良しのフィアッセさんと恭也さんが羨ましいです!」
ん、『おばさん』!? どうみてもなのはの姉と思われるが、それにしても若い。
なのはが若いのを差し引いても、上には上がいたというか……生命の奇跡というか……
どこからどう見ても十七歳に見えない。カリムと同い年くらいではないのか?
というか……
「すみません……そろそろ離して頂けますか……?」
「あっ、ごめんね! そういえばあなたのお名前聞いてなかったわね」
ようやく胸囲の破壊力から逃れることができた。
でも、フィアッセの胸に包まれていると、安心できる不思議な力があるように感じられた。
「イクス──イクスヴェリア・グラシアです。よろしくお願いします、フィアッセ」
どこに行っても名前を呼ばれるベルカと違って、ここでは毎回自己紹介をしなければならない。
それが、イクスヴェリアにとって、とても新鮮な経験になった。
「さぁさ、立ち話も何だから、家の中に入りなさい。詳しい話はそっちでね」
ヴィヴィオの祖母──桃子というらしい──に連れられて、一同家の中に入っていった。
そしてそこで、『地球のクリスマス』について色々勉強した。
元々は世界に広く伝搬した宗教に関わる記念日で、『サンタクロース』という存在が、
子供達のために毎年プレゼントを配ってくれるのだそうだ。
「でね、アインハルトにこの話したら『富の再分配……サンタクロースは共産主義者ですか?』とか
 真顔で聞かれちゃったんだよー。『赤い服も着ていますし』って……あはは」
「ふふっ……真面目なアインハルトらしいですね。でも、幻想的で素晴らしいですね。
 私は空を飛べませんが、トナカイのソリを引きながら、世界中の子供達にプレゼントを配る……
 私もサンタクロースになりたいですね」
他にも、この季節独特の文化……サンタクロースにならって、みんなでプレゼントを交換したりすると聞いた。
でも、たった今聞いたばかりだから、プレゼントは持っていない。
「大丈夫じゃない? イクスのリュック、さっきコインがちゃりんちゃりん言ってたよ。
 カリムさんがおこづかいくれたんじゃない?」
そう言われて、バッグの中を探してみる。ちっちゃな財布の中で、確かな重さのコインが音を立てていた。
でも、もちろんベルカでしか通用しない通貨だ。
なのはに頼んで換金してもらい、ヴィヴィオと一緒にプレゼントを買いに行く事にした。
「夕方までには帰って来なさいよー。それから、直接翠屋に行く時は電話ちょうだいね。お昼はどうする?」
「はぁい! お昼はどこか、イクスが気に入った場所で♪」
こうして、二人でプレゼント購入がてらの海鳴観光が始まったのだった。


商店街の入口まで歩いてくると、ふわふわした飾りやポンポン、電飾が飾られたモミの木があった。
そして、あちこちを見てみると、どこの店も同じような装飾があった。
街全体がそわそわしたような、嬉しさに満ちた雰囲気が漂っていた。
さっき教えてもらった通りだ。
「素敵な街ですね……ヴィヴィオは一年で何回くらいこちらに来るのですか?」
「うーん……連休の時と、夏休みとか冬休みみたいな時かな。アインハルトも一緒にね」
そう言ってはにかむヴィヴィオ。
それにしても、立場上イクスヴェリアもヴィヴィオも、ベルカの歴史上大変な重要人物ということになっており、
特権階級とまでは行かなくとも──むしろ自分達で「それは止めてくれ」と否定しているが──、
いわゆる『普通の人』とは違う。何かがあったら、避難でも疎開でもしなければならない。
でも、この世界では、ただ二人の女の子が商店街でショッピングをしているだけだ。
拝む者も、命を狙う者もいない。
その開放感と、クリスマスの雰囲気が合わさって、とてつもない高揚感を覚えずにはいられない。
「何を買ったらいいのでしょうか?」
「アクセサリとかいいんじゃない? ネックレスとかイヤリングとか」
ヴィヴィオの一声で、あっさりと何を買うかが決まった。
そのままウィンドウショッピングをしながら、あちこちを回ることにする。
「わぁっ、ネコさんです!」
「お? 美由希のとこの……そう、ヴィヴィオじゃん! そっちの子は友達?」
「はい! イクスっていうんですよ、美緒さん。今年は一緒にクリスマスパーティーなんです」
動物達がケージに入って、道行く人々をクリクリとした目で見つめている。
こういった類の店はもちろんベルカにもあったが、どちらかというと使い魔ショップと言った方が正しい。
ネコを始め、可愛いネズミ──「これ『ハムスター』っていうんですよ」──やわんこを撫でて、
次の場所へ向かう。
「ふぇぇ……いい匂いがしますー」
「この辺はレストラン街だよ。イクスが見たことない料理もいっぱいあるんじゃないかな?」
パスタとかステーキとか、見慣れた料理もあるが、液体をご飯にかけて食べる料理だとか、
パスタとはまた違う、スープに麺を入れた料理、それから肉や野菜を皮に包んで蒸した料理などなど、
料理の種類も様々で、見ているだけでも飽きなかった。
時刻はもうお昼時で、あちこちのレストランが賑わいを見せている。
子供同士で入れそうな店が中々ない。
「ふにゃー、疲れちゃった……イクス、どこかいい場所決まった?」
「あ、いえ……どれも良さそうなところばかりで……」
ふと、目の前にあったドアを見る。やはり異国の文字でさっぱり読めなかったが、奥にいた女性と目があった。
彼女がヴィヴィオに目を移すと、ぱたぱたとやってきてドアを開ける。
「やっぱりヴィヴィちゃん! なんやもっと遅なるって聞いてたのに」
「レンさん! 新しくお店開いたって聞いてたんですけど、ここだったんですね」
「あ、あの……お二人はつまりどういう……」
ヴィヴィオの交友範囲がとてつもなく広いということを、イクスヴェリアは改めて知った。
流れのままに、店の中へと入っていく。
「あ、ごめんねイクス。この人はレンさんって言って、中華──えーっと、今朝食べたご飯の大元みたいなものかな。
 そういう料理を作る人なんだよ。今夜のパーティーでも美味しい料理を作ってくれるんだって♪」
「ふぇぇ……で、その中華料理というのは食べたことがないです。どういうのがあるんですか?」
イクスヴェリアの言語は、残念ながらヴィヴィオにしか分からない。
それを翻訳してレンに伝えてもらうと、彼女は難しい顔で首を振った。
「中華はホンマに色々あるからなぁ、どれとは一口には言えへんのやけど……
 メニュー見ても分からへんやろし、ちょっと周りの人が食べてるもの、見てみ?」
周囲を見てみる。様々な客が、色々な料理を口にしていた。
大きな丼に入った、ちぢれのある麺を啜る者。
細切りにした青い野菜と黄色い根菜、それから肉を炒めた物を食べる者。
しかも皆一様に、二本の棒を使って、器用に食事を口に運んでいる。
「朝、ヴィヴィオもアレを使っていましたよね」
「お箸、っていうんだよ。イクスも使ってみる?」
知らない食文化に思わず興味を惹かれ、こくこくと頷く。
こういう形で食事をする場所が決まるのも、新鮮味があっでいい。
早速テーブルに座らせてもらい、「料理」を待つ。
二人共子供なのを考えて、「おまかせ」で出してくれるそうだ。
「楽しみですね。ふふっ、こうやって遊ぶなんて、聖王教会だと殆どないですから……」
「私も! いつもママのご飯だから、たまにお外で食べるとワクワクするんだよねぇ」
そうして期待を膨らませて出てきたのは、ラーメンに麻婆豆腐、小籠包、
それからデザートに杏仁豆腐──全部ヴィヴィオから聞いた料理名だ──だった。
全部ミニサイズで、それぞれちょっとずつ食べるのも、教会の食事と全然違うところだった。
ラーメンには練った魚肉や、根菜の漬物など、麺以外の材料もふんだんに使われていた。
味は濃いめだが、それが却って食欲をそそる。
初めて箸というものの使い方を教えてもらい、実際に使ってみる。
結構難しかったが、異国の料理を異国の食器で食べることは、本当に初めての経験だった。
「はふ……はふ……このまーぼーどーふ、凄く辛いですぅ……でも美味しいです!」
「レンさん、この小籠包、中のお汁がたっぷりでもちもちしてて……私もイクスと同意見です、とっても美味しい♪」
「せやろ? イクスちゃんも楽しんでってな」
初めての『中華』は大満足だった。是非ともベルカ自治区にも導入したいくらいだ。
おまけしてくれたのか、びっくりするほど安くて、それがまた驚いた。
「ええよええよ、その代りヴィヴィちゃん、うちの店いっぱい宣伝してな?」
「ははっ、分かりました、レンさん!」

食事を終えた後は、いよいよメインイベント、プレゼントだ。
ヴィヴィオに連れてこられたアクセサリショップでは、大小様々な宝石──パワーストーンというらしい──や、
チョーカーにペンダントなど、キラキラしたジュエルがあしらわれたアクセサリが一面に散りばめられているのを見るのは、
クリスマスに限らず女の子なら誰でも虜になってしまう。
「ヴィヴィオ! どれもこれもとっても綺麗です!」
「迷っちゃうね、ふふ……」
店内にいるのは、同い年かもう少し年上の少女達。つまり、値段としてもそこそこのものばかりだ。
迷いに迷っていると、あっという間に時間が過ぎていく。
シルバー、ピンクゴールド、ブラック……アクセサリにも色々種類があって、見ているだけでも飽きない。
外が暗くなりかけた頃になって、ようやくイクスは何を買うかを決めた。
パーティー用のフェザーペンダントを一つと、スバルとお揃いのイヤリングだ。
大好きな人のイメージによく似合う、サファイアブルーの宝石が埋め込まれたシルバーのイヤリング。
「うふふ、スバルにプレゼント……喜んでくれると嬉しいです♪」
「うー、私もアインハルトとお揃いのペンダント買うんだもん!」
狭い店内を縦横無尽に歩き回り、ようやくヴィヴィオがペンダントを買った頃に、
ヴィヴィオの端末が鳴った。
「はぁい、ヴィヴィオですー」
「ヴィヴィオ? ママだよ、夜は直接行く? それとも家に戻ってくるの?」
通話手段を持って歩くということ自体、古代ベルカではあり得ない光景だったのだが、
今となってはそれが当然に映るのも、ようやく自身が現代に慣れつつある証拠なのかもしれない。
「あ、今商店街にいるから、直接翠屋に行くね。何か手伝うことはある?」
「イクスと一緒にお話しててもらえるかな。それが一番だよ」
はぁい、とヴィヴィオが元気な返事をして、端末を閉じる。
くるりと振り向いた少女は、やっぱり元気いっぱいだった。
「そろそろパーティーだから……会場に行こう、イクス。すぐそこだから。
 今度こっちに来た時は、臨海公園を見せてあげるね。あそこ、すっごく広くて、綺麗なんだよ〜」
「はい! 今日はとっても楽しかったですけど……これからもっと楽しいんですよね♪」
お揃いの紙袋をそれぞれ持って、アクセサリショップから出る。
店員の「ありがとうございました♪」という声で、また一つ楽しい思い出を刻んだイクスヴェリアだった。


今回の目的地、ヴィヴィオの実家で経営している喫茶店に着いたのは、それからすぐのこと。
同じ商店街にあるとは薄々気付いていたが、まさかこんなに近かったなんて。
ただ、看板の読み方が分からない。
例によって聞いてみると、「みどりや」と返ってきた。
「とってもいいお名前です。こういうカフェはベルカにもありますね」
「ここのシュークリーム、世界一美味しいんだよ♪」
ヴィヴィオが先導でドアを開ける。唯一読めたのが、ドアにかけられた『CLOSED』の文字だった。
そこにいたのは、さっきサンタコスで抱きしめてくれた人──フィアッセだった。
「あ、ヴィヴィオおかえりー。いらっしゃい、イクス!」
「ただいま、フィアッセさん!」
ちょっぴり寒そうなサンタクロースの格好で、フィアッセはテーブルを拭いていた。
店内は暖房がかかり、シャンシャンと鈴の音がスピーカーから流れ続けている。
そのまま椅子に座らされ、紅茶を淹れてもらう。
「今日はなのはもレンも桃子もわたしも……ノエルまで厨房にいるから、人手は足りてるのよ。
 だから、ちびっこさん達はお茶でも飲んでゆっくりしててね」
「そういえば、ティオちゃん達はどうしたんですか?」
イクスヴェリアにとって衝撃の事実だが、フィアッセには双子の子供がいるらしい。
見た目が若すぎてさっぱり分からなかった。
その子達は別な家のパーティーにお呼ばれしているとのことで、今日はいないらしい。
「お泊りでクリスマスパーティーだって。我が子ながら大きくなったわ」
「うーん、残念です。こっちの新年の時に、また来ますね?」
なんでも、ヴィヴィオやイクスヴェリアとほぼ同い年なんだそうだ。
もし機会があれば、一緒に遊んでみたい。
「ところでフィアッセさん、恭也おじさんとか美由希おばさんは?」
「もうすぐ来るって言ってたわよ? それにしても……んー、イクスって可愛い♪」

そして唐突にまた抱きしめられた。どうやらフィアッセにはハグ癖があるらしい。
むぎゅむぎゅ抱っこされるのは嫌いではないが……本当にヴィヴィオの実家は不思議な人だらけだ。
ふんわり甘い匂いが漂う中、ようやくフィアッセの腕から開放された頃には、
イクスヴェリアの心はぽわぽわと浮いたままになっていた。
「今度……スバルにもぎゅーってしてもらいたいです……」
「あら、この娘ベルカ語なの? ヴィヴィオも話せるのよね」
そこから先は、フィアッセのミッド語談義に花を咲かせる展開になった。
ベルカの人間とはいえ、イクスヴェリアだってミッド語の覚えは多少ある。
その中で、スバルの倍近い歳だと知ってなお驚いたイクスヴェリアだった。
「わたしより桃子──ヴィヴィオのおばあちゃんの方が凄いわよ。桃子ー」
今度はそれ以上の衝撃が襲ってきた。
『おばあちゃん』というから、白髪とか曲がった腰とかそんなことを考えていたが、
厨房からひょっこり顔を出したのは、どうみても今のなのはとそう違わない歳の女性だった。
「なぁに、フィアッセ?」
「おばあちゃん!? ちょっとフィアッセ、冗談は止めて下さい!」
「イクス……残念? だけどフィアッセさんはウソついてないよ……」

驚きの余りイクスヴェリアは放心し、その後パーティーが始まるまでの記憶が途絶していたのだった。

「さーて、宴会部長の忍ちゃんが今年も取り仕切っちゃうけど、みんなー準備はいいですかー!?」
「はーい!!」
ゆらゆら肩を揺すられて、イクスヴェリアは正気に帰った。
ジュースの入ったコップを渡されて、起立する。
いっぱいのテーブルに、ローストチキンやらケーキ、クッキーにジュースなど、素敵な料理が輝いていた。
照明は暗めに落とされ、綺麗な電飾がそこかしこでぴかぴか光っていた。
「じゃあ、面倒なのは抜き! クリスマスを祝って……かんぱーい!」
「かんぱーい!!」
あちこちでチン、とグラスの弾ける音。
イクスヴェリアもヴィヴィオとジュースのコップをぶつけあい、くぴくぴと飲んだ。
さぁ、パーティーの始まりだ!

「んー、美味しい! 流石桃子さんの料理はどれもこれも逸品ね!」
「ははっ、アリサちゃん一度に取り過ぎだよぉ。ところで……なのはちゃん達とフィアッセさん達と……
 桃子さん達はいつも通りだね」
「はい、あなた♪ あーん♪」
「はむっ……とっても美味しいよ、なのは! なのはの料理は世界一だよ!」
「はい、恭也♪ あーん♪」
「やめろ……恥ずかしいだろ……もぐもぐ……」
「ほら、若い子に負けちゃだめよ。あーん♪」
「桃子……勘弁してくれないか……んぐっ」
トリプルバカップル!? 宇宙の法則が乱れている!?
ヴィヴィオと一緒にイクスヴェリアは輪の中に入っていったが、驚く程弾けているパーティーだった。
聖王教会では、結婚式の二次会でもここまで盛り上がることはない。
「レンさん、今日も素敵な料理をありがとうございます」
「なははー、アリサちゃん達がちっちゃい頃からえらいお世話になってるから、これくらいはお安いご用なんよ」
「あ、あの! 皆の話──海鳴の話、もっと聞かせて下さい!」
ノリに任せて、イクスヴェリアは場の一同に頼んだ。
スバルがいない分、プレゼントの他におみやげ話をいっぱい持ち帰りたいのだ。
話はアリサとすずかが中心となり、ヴィヴィオが新しく家族に加わってからの話が続いた。
「二、三年前のクリスマスかな……ヴィヴィオがイクスの話を持ってきてくれたの」
「ちょうどそれくらいだね。『大切な友達がいる』って──」
イクスヴェリアの存在をあっさり受け入れてくれたのは、まだ自身が眠っていた時期に、
ヴィヴィオが海鳴で話をしていてくれたからなのだそうだ。
名前を聞いて、『あぁあの時の』と納得したらしい。
「うぅっ……ヴィヴィオ、今日は本当にありがとうございます……こんな素敵なパーティーにご招待頂いて……」
「わわっ、イクス泣かないで! ほら、楽しい時は笑うんだよ?」
ヴィヴィオがケーキを取り分けてくれて、イクスヴェリアの前に置く。
その微笑みに、大切な友達の笑顔に、少女もまた笑顔で返したのだった。
「……はい、ありがとうございます!」

***

宴が終るというのは、あまりにも早い。
パーティーが締められた後は、ヴィヴィオ・フィアッセ・ユーノの三人で、アリサの車で高町家に戻った。
桃子──未だに年齢と外観のギャップが信じられないが──曰く、「バカップルは分断しないとダメ」だそうだ。
他の人達は後片付けや、めいめいに帰宅したようだった。
フィアッセは家に帰り着いてもまだサンタクロースの衣装を脱ぐのが惜しいらしく、
風呂に入るまでは脱がないと宣言して、リビングに存在感を放っていた。
ヴィヴィオと二人でお風呂に入った後は、それぞれパジャマを着て、歯を磨いて、同じ部屋の同じベッドに入った。
浴場は、教会でみんなが入るのを前提に作ったのとは対照的に狭かったが、
これはこれで友達と密着してお風呂に入れるという新鮮な体験ができた。
ヴィヴィオの部屋も、元々はレンがこの家に居候していた時期に使っていた部屋らしい。
本当に、ヴィヴィオの実家は複雑な経緯を持っているのだと改めて感じた。

二人でちょっとだけ星空を観た後、おもむろにヴィヴィオが口を開いた。
「あのね、イクス。お話してなかったんだけど……ママからもはっきりとは聞いてないんだけど、
 多分イクスが私達と一緒に海鳴に来たのって、避難とか亡命とかじゃなくて……」
「知っていましたよ、最初から。ヴィヴィオの家に行くと聞いた時点で、今年はスバルに会えないんだなぁって」
こちらに来てから遊んでばかりだったので、昼食の最中くらいには完全に悟っていた。
カリムやなのはも黙っていたが、冥王イクスヴェリアすらもやはり黙ってなりゆきに身を任せていたのだ。
それがいいことか悪いことか……ではない。
ただ、その方が誰も悲しまずに済むと知っていた、それだけなのだ。
「だって、無粋じゃないですか。みんながあそこまで大掛かりにお芝居してくれて──セインは担がれたみたいですけど、
 私はクリスマスの夜にスバルと過ごせないくらいで癇癪起こして世界を滅亡させたりはしませんよ?」
くすくすと笑ってみせたイクスヴェリア。そこに、怒りや悲しみの感情はない。
むしろ何かに愛情を注ぐような、穏やかな目でヴィヴィオを見つめた。
「みんなが私に悲しい思いをさせたくないと考えてやってくれたことなら、乗ってあげなければ失礼というものですよ。
 何より、高町家の皆さんは素敵な人達でしたからね」
ベッドの中で、少女は微笑む。
今日一日、色んなことがあった。
まずはヴィヴィオの家で朝ご飯。そして海鳴へ。
いきなりフィアッセに抱きしめられたり、クリスマスについて勉強したり。
それが終ったらショッピングに行って、美味しいお昼ごはんを食べて、プレゼントを買って……
プレゼント交換の結果、貰ったのはすずかからの贈り物で、髪留めのリボンだ。
赤くてふわっとしていて、後ろ髪をまとめるのにちょうどいい。
今度スバルに会う時は、このリボンをつけて会うことになるだろう。
いきなりのイメージチェンジで、少し驚くかもしれない。そしてそれを見るのが、楽しみで仕方がない。
「ヴィヴィオ……今日は本当にありがとうございました。とても……とっても楽しかったです」
「えへへ、そう言ってもらえると嬉しいな。後でスバルさんにおみやげ、よろしくね」
今も、スバルは現場で戦っているのだろうか。それとも、もう戦いを終らせて自宅で休んでいるのだろうか。
できれば、後者であって欲しい。素敵な聖夜だけを、満点の星空を、スバルにも味わって欲しいのだ。
心からの願い。それは、きっと届くはず。
「ヴィヴィオ……これからもずっと、友達でいて下さいね?」
「ん? どうしたの改まって……でも、答えは『はい』だよ。私達は、最高の親友♪」
すぅ、と息を深く吸って、ヴィヴィオの手を掴む。
まどろみが甘く頭にまとわりつき、夢の世界へと誘ってくれる。
「おやすみなさい、ヴィヴィオ……私の一番の友達」
「おやすみ、イクス……明日はスバルさんに会えるといいね」

イクスヴェリアが眠りについた時、大好きな恋人が夢の中で手を振っていた。
彼女は笑いながら、サファイアブルーのイヤリングを身に着けていた。
「大好きです、スバル……」

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